[2] involuteΣiii(bevel gear design system)


2.1 概要
  involuteΣⅲ(bevel gear)は,かさ歯車の寸法,強度(鋼,樹脂),組図,軸荷重,歯面修整,伝達誤差,歯面評価,FEM解析,歯形データおよび測定データ等の機能を備えており,効率よく的確に設計することができます.
  本ソフトウェアは,今までオプション扱いしていた機能も一部,基本ソフトウェアに含めました.新機能として,5軸加工機で製造する場合を考慮して大歯車の歯形を平面とした歯車も追加しました(2.25項参照).図2.1に全体画面を示します.

2.2 ソフトウェアの構成
  involuteΣⅲ(bevel gear)の構成を表2.1に示します.表中の○は基本ソフトウェアの機能で◎はオプション機能です.


2.3 寸法設定(プロパティ)
  かさ歯車の種類,寸法分類を以下に示します.また,図2.2に例題歯車の設定画面を示します.
(1)かさ歯車の種類
  すぐばかさ歯車,まがりばかさ歯車,ゼロール
(2)寸法分類
     (2.1) すぐばかさ歯車
         ・標準
         ・平行頂げき
         ・ANSI/AGMA 2005-D03
         ・AGMA 208.03(最少歯数7歯対応)
         ・グリーソン式自動車用
     (2.2)まがりばかさ歯車
         ・ANSI/AGMA 2005-D03
         ・AGMA 209.04
         ・グリーソン式(1960)
         ・グリーソン式(11歯以下)
     (2.3) ゼロールベベルギヤ
         ・ANSI/AGMA 2005-D03
         ・AGMA 202.03
(3)歯たけの傾斜は,標準テーパ,等高歯,デュープレックステーパ,TRLに対応しています(AGMA).


2.4 寸法
  モジュール,歯数を入力することにより標準値が入力されます.軸角は標準90゚で入力範囲はΣ=60°~160°且つ,冠歯車(ピッチ円すい角最大90°未満)に対応しています.


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  図2.3では,モジュール,歯数,軸角を設定すると,選択した寸法規格に基づき標準値が入力されます.また,入力操作において以下のような機能があります.
(1) プロパティでは,歯車の種類を設定していますが, 図2.3の歯車諸元でも変更することができます.
(2)歯たけ,歯厚および円すい角の設定基準は,外端基準または中央基準の選択をすることができます.
(3)歯先および歯底円すい角は,図2.4のように60進と10進を変換できる機能があります.
(4)図2.5には外端部の数値を表示していますが,中央部,内端部の寸法も表示することができます.図2.6の寸法結果2にかみ合い率等を示します.


2.5 精度
  図2.7に,かさ歯車の精度(JIS B 1704:1978)を示します.

2.6 組図
  図2.8~2.11のように組立距離やボス径を設定し作図することができます.作図機能として拡大,距離計測などがあり,図2.8で面取り加工を「する」にすると小端部に面取りを与えた形状(図2.9)とすることができます.図2.10に軸角60°を,図2.11に軸角160°の組図例を示します.


2.7 かさ歯車の歯形
  involuteΣⅲ(bevel gear design)で生成する歯形は,図2.12に示す球面インボリュートであり,歯元は球面トロコイド曲線です.そのため,デファレンシャルベベルギヤなどの歯数の少ない歯車であっても正しいかみ合いを示します.


  歯形計算条件を図2.13に示します.また,まがりばかさ歯車の歯すじ(図2.14)は,「円弧」,インボリュート,「エピトロコイド(図2.15)」,「等リード」を選択することができます.歯すじ球面インボリュートですし,大形歯車でも組み立てが容易です.歯すじを等リードとすることで金型から一定のリードで抜くことも可能ですし,大形歯車でも組み立てが容易です.

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2.8 かみ合い図
  正面歯形の作図機能として拡大,距離計測などがあり,外端,中央,内端部の歯形を表示します.


2.9 歯形レンダリング
  歯形レンダリングを図2.17に示します.コントロールフォームで歯車の表示角度を変更でき,図の大きさを変えることもできます.また,歯面接触を確認するため角度変換した状態を図2.18に示します.ここでは,ピニオンを「水平」,「垂直」に移動することができますので誤差を与えたときのかみ合い接触線を容易に把握することができます.


2.10 歯形・歯すじ修整(オプション)
  歯形修整,歯すじ修整をする場合,図2.19~2.23に示すように修整を与えることができます.図2.21では修整する指定点数(最大=50)を入力することができ,図2.22のように円弧パターンで入力することもできます.


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  歯形1本,歯すじ1本の修整の例を図2.23に示します.


  歯形断面分割を5,歯すじ1としたときの修整とトポグラフの例を図2.24に示します.トポグラフでは,歯形と歯すじの分割数をそれぞれ最大50まで設定することができます.


2.11 歯当たり(オプション)
  歯形・歯すじ修整を与えた歯車(無修整歯形を含む)の歯当たりを表示することができます.図2.25の歯当たり設定では取り付け誤差,接触最大クリアランス(光明丹厚さ)を設定することができます.例として図2.19の修整を与えたときの歯当たりを図2.26に示します.

2.12 バックラッシ変化
  図2.24の歯形・歯すじ修整を有する歯車のバックラッシの変化を図2.27に示します.図2.27よりこの歯車のキックアウトは0.2μmであることが解ります.


2.13 ボール高さ
  歯厚管理をするため歯幅の中央付近にボールを配置し,その時のボール高さを計算(すぐばかさ歯車のみ)します.製造時の歯厚管理に適しています.図2.28 に,かさ歯車のボール高さの例を示します.


2.14 歯形データ出力(オプション)
  歯形・歯すじ修整を与えた歯形(無修整歯形を含む)をCADデータで出力することができます.図2.29で歯形ファイル条件を設定し,図2.31のように3D-IGESファイルを出力することができます.(3D-DXFも出力可能).また,かみ合い歯形の3D-IGESや,図2.30のように組図の2D-DXFファイルを出力することができます.なお,図2.30で歯形の分割数を変更することができます.
  3D-IGESファイル歯形生成時,歯幅を延長して出力したい場合は,図2.29(b)で対応可能です.CAD作図例を図2.31(b)に示します.


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2.15 伝達誤差解析(オプション)
  図2.19の歯形で無負荷における回転伝達誤差解析を行った例を以下に示します.取り付け誤差を図2.33のように与え,ピニオンのピッチ誤差(歯番号6のみ)として5μmを与えています.


  伝達誤差,ワウ・フラッタ,フーリエ解析の計算結果を図2.34~2.36に示します.図2.35のワウ・フラッタではこのグラフ波形を音で確認することができます(グラフ右上の Sound ).
    ピッチ誤差の設定は図2.37および図2.38に示すように最大値で入力することも歯の誤差を個々に入力することもできます.

2.16 歯形測定データ出力(オプション)
  Carl Zeiss三次元測定機とTPR大阪精密機械測定機の2種類の測定データ出力機能があります.
(1)三次元測定機(Carl Zeiss)用測定データ出力の概要
  図2.39に測定データの設定画面を示します.歯形分割数と歯面の測定逃げ量および測定基準距離を設定することにより測定点座標と法線ベクトルをファイルに出力します.


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(2)TPR大阪精密機械測定機の測定データ出力の概要
  図2.40の測定データの設定をすることにより測定ノミナルデータをファイルに出力します.「測定機(HyB-35・65)は,測定歯面を,「点」ではなく「線」で測定するため精密な測定をすることができます.3次元測定機のような格子点ではなく,線で歯のエッジまで測定することにより,騒音や振動の原因となる微妙な形状誤差をキャッチし,歯車の精度を追求します.」(TPR大阪精密機械㈱様カタログより転載)

2.17 測定例1
  involuteΣⅲ(bevel gear design)で,かさ歯車測定用の歯形データと測定ベクトルを出力してCarl Zeiss社の3次元測定機のベベルギヤ測定用ソフトウェア(GearPro-Bevel 1))で読み込み,表示した例を図2.41~2.43に示します.
*1):「GearProは,ドイツ・カール ツァイス社(Carl Zeiss IMT GmbH)の製品です.」


2.18 測定例2
  involuteΣⅲ(bevel gear design)でベベルギヤ測定用の歯形データと法線ベクトルを出力してTPR大阪精密機械測定機(HyB-35・65)で測定した例を図2.44に示します.


2.19 歯車強度計算(JGMA)
  JGMA 403-01:1976(曲げ),404-01:1977(面圧)に基いて計算します.
(1)動力設定:トルク設定(MN・m, kN・m, N・m, N・cm, N・mm, kgf・m, kgf・cm, gf・cm)と回転速度,クラウニングの有無などの設定画面を図2.45に示します.


(2)材料設定:図2.46の材料設定で許容応力等を設定します. 材料の選択は,図2.47の中から硬度を参考にして材料の許容応力値を決定します.また,材料記号,材料の許容応力値(σFlim,σHlim)および硬度は,任意に入力することができます.


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(3)係数設定:強度計算の係数設定画面を図2.48に示します.係数は補助フォームを表示しますのでその中から選択することも,直接入力することもできます.強度計算結果を図2.49に示します.


2.20 歯車強度計算(AGMA)(オプション)
  AGMA 2003-B97:1997に基いて計算します.図2.2のプロパティで強度計算「AGMA 2003-B97」を選択します.ここでは,図2.51の歯車についての強度計算例を図2.52~2.56に示します.


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  動力とトルクの関係を計算する補助機能画面を図2.57に示します.

2.21 歯車強度計算(樹脂歯車)
  樹脂歯車の曲げ強さはLewisの式,歯面強さはHertzの式で計算します.図2.2のプロパティで「樹脂」を選択します.ここでは,図2.58のすぐばかさ歯車についての強度計算例を図2.59および図2.60に示します.
  樹脂材料の許容応力値は,温度,寿命を考慮した樹脂材料の実験値を使用しています.適応材料は,M90,KT20,GH25,ナイロンです.これ以外の材料は,M90比率係数(共通物性値との比)で計算することができます.


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2.22 軸受荷重
  歯と軸受に作用する荷重の計算をします.図2.61に歯に作用する荷重の方向と軸受位置の参考図を示します.図2.62でトルクと軸受距離を入力することにより軸受荷重を表示します.


2.23 歯面評価(オプション)
  強度計算終了後,図2.63の歯面評価グラフ設定画面で歯形修整の有無,駆動歯車の種類,計算ポイント数を入力するとすべり率グラフ(図2.64)とヘルツ応力グラフ(図2.65)を表示します.

2.24 FEM歯形応力解析(オプション)
  図2.66に示すFEM解析の設定画面で縦弾性係数,ポアソン比,分割数および荷重位置そして荷重を入力することにより5種類の応力(σxy ,せん断応力τ,主応力σ1 2)を計算します.歯車強度計算と共に歯に作用する実応力を評価する事ができますので歯車強度の信頼性を高めることができます.図2.67に最大主応力σ1と変位図を示します.


2.25 歯車作図例
  まがりばかさ歯車の歯すじを等リードで出力した歯形を図2.68に,軸角が160°の例を図2.69に示します.デファレンシャルベベルギヤのように歯数が少ない歯車であっても球面インボリュート歯形であるため正しい歯当たりを示します.
  歯形データを使用して,ボールエンドミルで機械加工した例を図2.71に示します.また,図2.72に光造形モデルの写真を示します.


2.26 大歯車平面歯形(オプション)
  5軸加工機歯車を加工する場合,曲面よりも平面の方が,加工効率が良くなるため大歯車の歯面を平面とし,これに共役面を持つ小歯車の歯面を生成することができます.
  図2.3の歯車で,大歯車の歯すじを図2.73のように「スキュー(ギヤ直線歯)」として選択することで大歯車の歯面を平面とすることができます.

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  歯形を確認すると大歯車の歯形は図2.74のように直線であり歯すじは図2.75のように直線となっていることが分かります.


  歯面修整は,図2.24と同様に施すことができますが,ここでは,小歯車に単純な歯すじ修整のみ施した例を示します.
  小歯車に歯すじ修整を施すことで図2.77のレンダリングおよび図2.78の歯当たり解析のように歯幅中央部での接触を確認することができます.


  伝達誤差も図2.79のようにTE=0.054μmのため球面インボリュート歯形と変わりません.


  歯形出力は図2.29と同様で大歯車を平面としたときのCAD作図例を図2.80に示します.
  また,測定データも図2.39測定データの設定(Carl Zeiss)と同様です.

2.27 特殊かさ歯車
  ソフトウェアの標準機能ではありませんが,図2.81のようなダブルスパイラルベベルギヤの歯形も生成することができます.この歯形に関しては別途お問い合わせください.

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2.28 マシニングセンタによるベベルギヤの加工例

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